阪神の能見篤史投手(41)が21日、球団から来季の構想外であることを伝えられたことが球界関係者の話で分かった。タテジマ一筋プロ16年目のベテランは先発、中継ぎとポジションを変えながらチームの勝利のために身を粉にしてきた。今季も投手陣最年長として、ブルペンで奮闘。その背中で多くの若手を引っ張ってきた左腕が、甲子園を去る。
その美しく力強いフォームで聖地のマウンドで腕を振ってきた能見が、タテジマのユニホームを脱ぐ。球界関係者の話を総合すると、この日までに球団から来季構想外であることを伝えられた模様だ。事実上の“戦力外通告”。今季限りでの退団が決定的になった。
プロ16年目の今季は、コロナ禍で開幕が延期となる不測の事態にも万全の状態を整えてブルペンの一員として開幕メンバー入り。開幕から2試合連続無失点と好スタートを切った。劣勢の展開など役割を問わず任された仕事を懸命に全うし、チームに貢献。しかし、9月は登板した8試合で3被弾するなど本来の力を発揮することができず同11日に出場選手登録を抹消された。
その後、チーム内のコロナウイルス集団感染の影響で抹消された10選手の代替選手として25日に再昇格。直近7試合連続無失点と結果を残し、20日の広島戦にも登板し1回を無得点に封じていた。ここまで30試合に登板し防御率4・98。それでも、チームは藤川が今季限りでの現役引退を表明するなど転換期を迎えており、41歳となった左腕も来季のチーム構想から外れた。
紛れもない功労者だ。04年ドラフト自由枠で大阪ガスから入団。即戦力左腕として1年目から1軍を経験し、09年には先発として13勝をマーク。以降はエースとして3度の開幕投手、5度の2ケタ勝利を挙げるなど大黒柱として支えた。18年途中からは中継ぎに転向し、昨年9月14日の中日戦では史上2人目となる40歳代でのシーズン50試合登板という偉業も成し遂げた。
成績はもちろん、普段からの取り組みや歳を重ねても衰えないあふれる向上心で多くの後輩たちが、その背中を見て、追いかけてきた。16年からは毎年1月に岩貞らが弟子入りする形で行う沖縄での合同自主トレが恒例。タイガースが『能見篤史』という男を失う影響は決して少なくない。
今春には「まだまだ体が動くから」と進退について言及することはなかった。今後は他球団で現役続行の道を模索、現役引退の選択肢になるが現時点では未定と見られる。多くの人にとって突然の“別れ”になることだけは間違いない。
◆能見 篤史(のうみ・あつし)1979年(昭54)5月28日生まれ、兵庫県出身の41歳。鳥取城北から社会人の大阪ガスを経て04年ドラフト自由枠で阪神入り。09年は先発に定着しチーム最多の13勝。12年に172奪三振で初タイトル。13年WBC日本代表。1メートル80、74キロ。左投げ左打ち。
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