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浜田剛史氏が展開予想 尚弥の敵は“立場の違い” - スポニチアネックス Sponichi Annex

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WBA&IBF世界バンタム級タイトルマッチ   井上尚弥―ジェーソン・モロニー ( 2020年10月31日    米ラスベガスMGMグランド )

MGMリゾーツのビル・ホーンバックル社長(左)と面会した井上尚弥(大橋ジム提供)
Photo By 提供写真

 約1年ぶりのリングに上がる王者・井上尚弥が28日(日本時間29日)、新型コロナウイルス対策として外部との接触が遮断される隔離エリア、通称「バブル」に入った。穴がないと評価される挑戦者ジェーソン・モロニーとの一戦はどんな展開になるのか。本紙評論家の浜田剛史氏(59=元WBC世界スーパーライト級王者、帝拳代表)が展望した。

 普通に戦えば井上の前半KO勝ちが予想できる。スピード、パワー、技術面と全て勝っており、特に一瞬のスピードが違う。モロニーはボクサータイプ寄りのボクサーファイターで意外性がなく、動きが計算しやすい。手数が多く、体が柔らかくて足もよく動くが、リズムで動くので(前3団体統一ライト級王者)ロマチェンコのような滑らかさはない。

 中間距離からの左ボディーアッパーが得意だが、井上に左フックを合わせられるリスクを考えると、簡単には打てないだろう。どうすれば勝てるか考慮した上で、徹底したアウトボクシングで来るのではないか。1発打っては離れるヒット&アウェーに徹し、試合が進むにつれて2発、3発と増やす戦い方だ。

 井上の懸念材料は、この試合における立場の違いだ。内容は関係なく1ポイントでも上回って勝てばいいモロニーに対し、ロマチェンコが敗れた今、井上は世界的にも「前半KOは当たり前」と期待されている。それだけに中盤までアウトボクシングで粘られ、焦って大振りになってしまうと隙ができ、普段なら避けられるパンチをもらうことも考えられる。例え軽いパンチでも「あの井上が一発食らった」との印象をジャッジに与え、モロニーの10―9と採点される可能性もあるのだ。タイソンとホリフィールドの再戦(注1)を例に挙げると、同じ一発を打ってもホリフィールドの方が「あのタイソンのパンチを浴びても立っている」との印象を見ている人々に与えた。その時の王者はホリフィールドだったのにもかかわらずだ。それがタイソンの焦りを呼び、“耳かみ”につながったと思う。

 1回でも10回でも結果的にKOなら同じこと。井上の左フックと左ボディーなら完璧に当たらなくてもダメージを与えられる。モロニーを徐々に削り、動きを鈍らせればいい。元ミドル級世界王者のハグラーも、1回から全力を出したのはハーンズ戦だけ(注2)。それ以外は全力で来る相手に対して常に余力を持って戦い、中盤から倒しにいった。井上に負ける要素はない。焦りだけが禁物だ。(元WBC世界スーパーライト級王者)

 ※(注1)96年11月の初戦(ラスベガス・MGMグランド)は圧倒的不利と予想されたホリフィールドが11回TKO勝ち。タイソンからWBA世界ヘビー級王座を奪った。97年6月の再戦(同)ではホリフィールドのバッティングにもいら立ったタイソンが右耳をかみちぎって2ポイントを減点され、左耳にもかみついて3回終了失格負け。罰金とライセンス停止処分を受けた。

 ※(注2)85年4月、ラスベガスのシーザースパレスで行われた3団体統一世界ミドル級王者“マーベラス”マービン・ハグラーと全団体同級1位のトーマス・“ヒットマン”・ハーンズの一戦。開始直後から壮絶な打撃戦となり、3回に右を3発決めたハグラーがKO勝ち。「THE FIGHT」と呼ばれ、レナード、デュランを含めた4人によるミドル級黄金時代を彩った。

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