【グラスゴー(英国)=藤中栄二】挑戦者でWBA正規王者の井上尚弥(26=大橋)が「259秒殺」で無敗のIBF王者エマヌエル・ロドリゲス(26=プエルトリコ)を仕留めた。計3度のダウンを奪い、レフェリーストップによる2回1分19秒、TKO勝ち。IBF王座、米国で最も権威ある専門誌「ザ・リング」認定ベルトを獲得し、WBA王座の2度目防衛に成功。一時期の大スランプを脱出し、主要4団体で世界王者となった。通算戦績は井上が18勝(16KO)、ロドリゲスは19勝(12KO)1敗。

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WBSS司会者からの質問に井上は苦笑するしかなかった。試合後の会見で「KOまで2回かかったが」と問われると「そういう見方になっちゃいますか」とおどけた顔をみせた。英グラスゴーの期待は高かった。入場から大歓声を浴び、ロドリゲスには大ブーイングが起こった。ボクシング発祥の地で「ホーム」を味わいながらの2回TKO劇。英ボクシングファンを味方につけて日本人初の欧州世界戦勝利につなげた。

「プレッシャーから解放されたような、重圧がちょっと砕けたようなシーンだった。期待に応えられた」

1回は力んだ。前に出てきたロドリゲスの圧力で、井上はロープ際に追い込まれた。「試合は長引く」と頭によぎったものの「気持ちの余裕はありました」。父真吾トレーナーに「リラックスして柔らかく」と助言を受け、力みも消えた。2回には重心を低くし「勢いづかせないため」に少し前かがみで体を出した。「自分の重心を抑え、(ロドリゲスを)抑える」。危険な接近戦になると、カウンターの左フックでダウンを奪取。狙っていたボディーで2度立ち上がった無敗王者の肉体と心まで折った。

2月中旬、絶不調に陥った。倒す気持ちが前に出過ぎ、高度な防御が消えて真正面から打ち合った。1回戦(パヤノ戦)でみせた70秒KO勝ちのインパクトを期待され「自分のスタイルに影響した」。大橋会長まで心労で1週間も入院。異例の1カ月のスパーリング中断を決めた。真吾氏とのミット打ち回数を増やし、心身を「初心に戻る」作業に徹した。腹筋を殴ってもらう練習を多くいれてパンチ被弾の「覚悟」も磨き、スランプを脱出した。

IBF王座、ザ・リング認定ベルトを獲得し、プロ18戦目で世界に名だたる5本のベルトを日本人で初めて制覇した。「特にベルトについては。誰とやるかが重要」。ドネアとの最強決定戦に向けて気持ちを高ぶらせていた。