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レアル、ベンゼマが発揮した真価。ジダン監督も絶賛の「今季を代表するプレー」に詰まったフットボール哲学(フットボールチャンネル) - Yahoo!ニュース

 現地28日にラ・リーガ第32節が行われ、レアル・マドリードがエスパニョールに1-0で勝利を収めた。最下位で監督交代に踏み切ったばかりの相手に辛勝と、文字だけを見れば苦しい試合のようだが、勝利を決定づけたプレーは圧巻の一言だった。周りとの格の違いを見せつけたカリム・ベンゼマには、見えないはずのものが見えていた。(文:舩木渉) 【画像】レアル・マドリーの基本フォーメーション

●勝敗を分けたノールックヒールパス  レアル・マドリードほど勝利に対して忠実なクラブはあるだろうか。  現地28日に行われた第32節のエスパニョール戦、最下位の相手からマドリーは1点しか奪っていない。だが、失点さえしなければリードは1点だけで構わないという、自信に満ち溢れた実にマドリーらしい勝ち方だった。  試合後にはマドリーを率いるジネディーヌ・ジダン監督も「選手たちにはとても満足している。勝って、勝って、勝ち続けることは簡単ではない。選手たちを祝福する必要がある」と勝利を喜んだ。これでリーグ戦再開から5連勝となった。  もちろん対戦相手の事情など関係ない。  エスパニョールは残留圏内との勝ち点差が9ポイントに広がり、降格が現実味を帯びてきたこのタイミングで監督交代を決断した。2部降格に怯えてパニックに陥った中国発のオーナーグループに振り回される形でアベラルド監督が解任され、フランシスコ・ルフェテSD(スポーツディレクター)が今季終了まで暫定的にチームを率いることが発表されたのはマドリー戦の前日である。  火中の栗を拾わされたルフェテ暫定監督とともに、エスパニョールの選手たちは奮起した。マドリーにも果敢に勝負を挑み、とても50失点しているチームとは思えない強固な守備を見せた。GKディエゴ・ロペスを筆頭に全員が必死に体を張り、魂のこもったプレーで対抗した。  そんな中で均衡を破ったのは、1人の選手の閃きだった。両軍スコアレスでハーフタイムに入るかと思われた前半アディショナルタイムの46分、マルセロがサイドチェンジを蹴ると、セルヒオ・ラモスがそのボールをヘディングでペナルティエリア内に送る。  ゴールラインぎりぎりの深い位置で相手を背負いながらボールを受けたカリム・ベンゼマは、並の選手であれば次のプレーの選択肢が極めて限定されていたはずの状況で、キープしながら右足でノールックヒールパスを繰り出した。  相手DFの股を抜いたパスの向かった先には斜め後ろからカゼミーロが走り込んできており、出場停止から戻ってきたブラジル代表MFは豪快にディエゴ・ロペスの守るゴールを撃ち抜いた。ベンゼマには本来なら視野の外で見えていないはずの味方が、「見えていた」のだ。 ●「これが僕のフットボール」  当の本人は試合後の中継局『モビスター・プルス』のフラッシュインタビューの中で、ノールックヒールパスについて「僕にとってはこれがフットボールなんだ。ああいう物事は自然に浮かんでくる。視界には入っていなかったけど、カゼミーロが後ろから走り込んでくるのはわかっていたよ」と語った。  一方、ゴールを決めたカゼミーロは「ゴールはカリムのものだ。彼のクオリティは見慣れているから、僕はそれを求めた」と述べた。互いに分かり合った上で自然と成り立った、一瞬のスーパープレーだった。  ジダン監督もベンゼマには賛辞を惜しまない。試合後の記者会見では「カリムがすることには何の驚きもない。彼はピッチ上で発明をする選手であり、ボールコントロール、ヒール、パスは天才的だった。今季のラ・リーガを代表するプレーになるかもしれない。あれこそがチームプレーだ。カリムは自己管理し、毎年良くなっていっている」と、決勝点をアシストしたヒールパスを絶賛した。  今季のベンゼマは、キャリア最高とも言えるパフォーマンスを継続している。すでにリーグ戦31試合に出場して17得点7アシストを記録している。32節を消化したうちベンチに座ったまま試合を終えたのは一度だけ、途中出場も1試合だけと、年間を通して怪我なく良好なコンディションを維持し続けられている点も特筆に値する。再開後の連戦も全て先発出場と、32歳にして充実一途だ。  エスパニョール戦でも右に左に幅広く動き回り、前線に起点を作ってイスコやエデン・アザールと攻撃をけん引した。味方がゴールに向かうためのスペースを率先して作り出し、試合を組み立て、自らフィニッシュの局面にも関わる。 ●ベンゼマがマドリーを優勝に導くか  クリスティアーノ・ロナウド去りし後のマドリーにおいて、「真のエースはベンゼマ」という疑いようのない事実を世界に証明していると言っていいだろう。それくらい今のベンゼマの存在感は際立っている。  端的に言って、マドリーのサッカーはつまらない。語弊があるかもしれないが、バルセロナのような華麗なパスワークを見られるわけではないし、打ち合いになるようなエキサイティングな試合も少ない。勝利こそが絶対正義であり、試合内容云々ではなく、勝利こそが美学であるという考え方がピッチ上の選手たちからひしひしと感じられる。  そのマドリーにおける象徴的な存在でありながら、エレガントさとアイディアをフットボールに付け加えるのがベンゼマという選手なのだと感じる。在籍11年目にして、改めて彼の存在価値が大衆に正しく理解されようとしているようにも思う。  エスパニョール戦を終えて、マドリーは勝ち点を71に伸ばした。前日にセルタと引き分けていた2位バルセロナとの差は2ポイントに広がっている。優勝戦線はまだまだ緊迫した状態が続き、最後までどちらが頂点に立つかわからない。  ジダン監督が「私はラ・リーガを勝ち取っているとは思っていない。タイトルの行方は最後の日に決まるだろう」と最終節まで勝ち続けることの重要性を語れば、ベンゼマは「毎試合がラ・リーガの決勝戦だ」と気を引き締める。  ゴールを決める能力と、ファンタジスタ的な才能を兼ね備えた驚異のストライカーが、マドリーを頂に導くか。シーズンは残り6試合、すべての瞬間から目が離せない。 (文:舩木渉)

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June 29, 2020 at 11:40AM
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