北海道コンサドーレ札幌ミハイロ・ペトロビッチ監督(62)の策がはまった。

今季初めてのホームでの歓喜の瞬間、サポーターの大拍手に応え両手を挙げて喜びを爆発させた。札幌は定番の3-4-2-1ではなく、前線にFWを置かない形で横浜F・マリノスとの撃ち合いに臨んだ。逆転でつかんだ4試合ぶりの勝ち点3。指揮官は「自分たちのリスクを負ったサッカーが今日は実を結んだ」と上機嫌だった。

ミシャ流「トータルフットボール」を表現した。前線でプレーしたMF駒井が失点から1分後に同点弾。その2分後に、豊富な運動量で上下に流動的な位置を取ったMF荒野が決勝ゴールを奪った。同監督は「(複数ポジションをこなす)ポリバレントなタイプの選手を起用した。自分たちが狙いとするパスサッカーを展開しようと考えた」と明かす。「全員がどこのポジションやっても問題なくこなせる。それが私の哲学」。掲げるサッカーでの勝利だった。

アクシデントも乗り越えられる総合力。別メニューの主力、FW鈴木とDF福森は不在、前日時点で先発予定だったDF田中は練習中に右足首を負傷。メンバー変更を余儀なくされても、指揮官は思い描いた90分を貫いた。福森の代わりに左CBにルーキーMF高嶺をリーグ初、中盤でMF中野嘉を今季初の先発起用。FWジェイはベンチスタートで、DF進藤をのぞく9人がMF登録の選手を並べた。今季はCBにも挑戦する駒井はお立ち台でこう言った。「自分の能力的にいろんなポジションができる。監督に信じてもらっている。期待に応えたいと思っていた。見せられて良かった」。

リーグ再開後、6試合負けなし。札幌にとって前年度J1優勝チームとの対戦は過去1勝1分け14敗。01年ホーム鹿島アントラーズ戦が唯一の勝利。頂点に立ったチームにはね返され続けたが、堂々と戦えるクラブとなった。指揮官は「私自身は典型的なサッカーというものの概念からすると、少しそれから外れたクレージーな監督だ」と笑う。「今日は選手が素晴らしい試合を見せてくれた。今後も継続して見せていきたい」。次節は天皇杯覇者、神戸とのホーム戦。ミシャ札幌が、次はどんな戦いを見せてくれるか楽しみだ。【保坂果那】